見たものたち

恥ずかしいから読まないで下さい

鬼滅の刃が圧倒的に叫ぶ自己啓発マインド

鬼滅の刃が面白すぎる。

 

中学生自体は腐っていたので「BLの材料をゲットする」という動機があって

積極的に少年漫画を読んでいたけれども、

 

今はそういうのもないのでジャンプからは離れていた。

 

最後にハマったのはさよなら絶望先生

あとは「斉木楠雄のΨ難」。

(暗黒の社員時代、早起きを強いられおはスタのアニメを偶然見てハマった・・)

 

あまりにも流行しているので試しに「鬼滅」を読んでみた結果

純粋に面白すぎてハマってしまったというところである。

 

そう、鬼滅の刃のスゴいのは、

「あー流行り漫画だな」「男の子が好きそう」「腐ウケしそう」

とかそういうところを超越して、圧倒的にストーリーが面白いという点なのである。

 

はじめて鬼滅を読んだとき、私は感じた。

 

「あーこれ大正時代が舞台だけど、あまりにも世相を反映しているな」と。

 

もっと言ってしまうと、

 

「現代人の抱える不安を世界観に入れ込みまくっとる」

 

ということである。

 

 

ツイートでも書いたけど、その「現代人の不安」というのは

 

「いつ職がなくなるかわからない」

 

「大規模災害に見舞われたとき自分や家族は生き残れるか」

 

といったような普遍的なことであり、

それは非正規雇用労働者の増加とか

AIに仕事を奪われるだとか、南海トラフ地震だとか、(コロナもそうだけど)

とにかく例えぼーっと生きていようともそういう情報が入ってくる環境なのである。

 

主人公の炭次郎(メチャカワ)は第一話で

家族を皆殺しにされる。母と、4人の兄弟。妹も瀕死状態である。

タイトルにもなっている「鬼」によって殺される。

 

抗いようのない大きな力によって、

大切なものを一瞬にして奪われてしまう。

 

これこそ現代に生きる人々が言いようもなく恐れている「理不尽な不幸」ということで、

マズローの欲求5段階説で言うところの

第一段階(生理的欲求)、第二段階(安全欲求)を

ボガンと崩されてしまうのである。

 

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マズローの五段階欲求

 

 

主人公の炭次郎はここから生き残った妹を守るべく、戦いの中に身を委ねることになる。

 

「鬼滅」にハマってから気付いたのだけど、ジャンプ漫画の主人公は

・共感しやすいように

・かつ尊敬できるように

・かつ特別な存在であるように

作られている。

 

例に漏れず、炭次郎は共感できて尊敬できて特別である。

 

ただ私は驚いた、炭次郎は共感できるぎりぎりのラインであまりに悟りすぎている。

 

 

 

炭次郎がなぜそこまで思いやりにあふれ人の痛みに寄り添える人間なのかは

作中では一切描かれない、恐らく天性のものという位置づけなのかもしれない。

 

 炭次郎は、作中のキャラクターが驚いてしまうような、核心をついた発言をするのである。

ただそれは、読者側も「炭次郎ならそう言うよね~」みたいな発言ではなく

誰もが「うわ!そこ突くか!!!!」

と驚いてしまうような部分なのである。

 

 

ここで自己啓発マインドが炸裂する。

 

 

 

12巻p167

 

時透「……なんでそんなに人を構うの?」

  「君には君のやるべきことがあるんじゃないの?」

 

炭次郎「人のためにすることは結局」

   「巡り巡って自分のためにもなっているものだし」

   「俺も行こうと思っていたからちょうどいいんだよ」

 

時透「えっ?」

  「何?今何て言ったの?今…今…」

 

 

 

 

 

 

 

 

こういうとこ。

 

 

 

giveの精神、根本ができている炭次郎。しびれる。

 

自己啓発本でなんか見たことあるような、

人の為になにかをする意義だとか、そういう不変の所に炭次郎は切り込んでくる。

正直普通に読んでる読者は、大正時代ってことなんか忘れていると思う。

 

獪岳の「幸せを入れる箱」の話とか、

炭次郎の「鬼は境遇が違えば自分がなっていたかもしれない姿」という発言とか、

 

いやいや本当に、何度か本で読んだことのあるような話が多い。

 

 

 

鬼殺隊で最も戦闘力が高いとされる「柱」の人々は

熾烈な戦いと鍛錬の果てに今の地位に行きついたという説明があるが、

これでもかというほど人間的に描かれている。

 

リアルが追及されているところが鬼滅の面白いところだ。

最強だから間違わない、正しい、従っていればいいというのは

所詮ファンタジーだという現実味を持って描かれる。

 

柱にも人間的な弱点と愛らしさがあるように作りこまれている。

 

 

 

多分作者の吾峠先生は相当な読書家だと思う。

どういう人生を送っていればこんなに密度の高い物語を書けるのか。

 

ちなみに鬼滅の刃のせいでわたしはジャンプを定期購読し始めたので、

これからも全力で追っていきます。

 

今回はこの辺で。

 

鬼滅サイコー。